東京大学大学院工学系研究科 光量子科学研究センター

Photon Science Center of the University of Tokyo

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超短パルス軟X線レーザー特有の表面加工メカニズムを解明

東京大学 大学院工学系研究科附属 光量子科学研究センターの坂上和之主幹研究員は、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構、国立大学法人宇都宮大学学術院(工学部)、学校法人早稲田大学理工学術院、国立大学法人東北大学多元物質科学研究所、国立研究開発法人理化学研究所放射光科学研究センター、公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)と共同で、X線自由電子レーザー「SACLA」を用いて超短パルス軟X線レーザーに特有の表面加工メカニズムを解明しました。  現在、ナノメートルスケールの半導体造形技術は複雑な工程からなるリソグラフィプロセスによって実現されています。将来の量産化や低価格化を実現するためには、より単純な直接加工プロセスを用いた精密加工技術による高い量産性と品質の実現が鍵となります。従来用いられている赤外領域(波長:800~1000 nm程度)に比べて波長の短い極端紫外(EUV)~軟X線領域(波長:10~200 nm程度)の超短パルスレーザーを用いると、波長と同等の超精密加工が可能になると期待されています。また、パルス幅が数十~数百フェムト秒である超短パルスレーザーを用いることで、加工領域以外への熱的影響を抑制した非熱的加工が実現可能となります。  得られた実験結果を軟X線エネルギーの吸収による原子と電子の振る舞いを組み込んだ理論モデル計算と比較した結果、照射レーザーの波長や照射強度を材料に応じて適切に選択することで、シリコンだけでなくさまざまな材料で熱的影響を抑制した超精密加工が実現できる可能性を明らかにしました。今後、さまざまな材料を用いた超短パルス軟X線レーザーによる加工データの蓄積と検証を積み重ねることで、レーザー加工学理の解明が進み、高集積回路やナノ構造をもつ機能性材料の量産化につながると期待されます。

本成果は、2019年11月28日(木)10:00(グリニッジ標準時)にNature Researchが提供するオープンアクセス・ジャーナル “Communications Physics”にオンライン掲載されました。

本研究の一部は、文部科学省光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)「光量子科学によるものづくりCPS化拠点・JPMXS0118067246」、「先端ビームによる微細構造物形成過程解明のためのオペランド計測・JPMXS0118070187」の助成を受けたものです。

References

  • Thanh-Hung Dinh, Nikita Medvedev, Masahiko Ishino, Toshiyuki Kitamura, Noboru Hasegawa, Tomohito Otobe, Takeshi Higashiguchi, Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio, Tadashi Hatano, Akira Kon, Yuya Kubota, Yuichi Inubushi, Shigeki Owada, Tatsunori Shibuya, Beata Ziaja and Masaharu Nishikino,
    "Controlled strong excitation of silicon as a step towards processing materials at sub-nanometer precision,"
    Communications Physics (2019).   doi:10.1038/s42005-019-0253-2 [Communications Physics誌サイト]

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